瘤(こぶ)とは樹木(立木)の幹表面にできる、円形状のたんこぶのような膨らみです。
この瘤の生成要因には諸説ありますが、虫の侵入や台風によって傷ついた樹皮から細菌が入りこみ、傷跡を修復する過程で瘤ができると考えられています。この瘤を割ると断面に「非常に美しい杢」が出ます。そのため世界各地で貴重な工芸材料として、古来から活用されてきました。樹種を問わずに生成され、英語では「burl」と呼ばれます。北欧では白樺の瘤がククサ(マグカップ)の素材として伝統的に使用されています。
樹木(屋久杉)表皮の瘤
稀少性
人の手で生成出来るものではなく、時間をかけて自然に成形されるもののため、入手しずらい稀少材の一つです。樹木への傷の修復過程で生成されるという特性上、流通量は安定していません。サイズが大きくなるほどさらに稀少になります。
特徴
油分を含むため艶があります。また非常に鮮やかな杢が出ます。見ごたえがあり、美しい一方で見た目の癖も強いため、使い方次第で良くも悪くも印象が変わります。花梨の瘤は現在は輸入制限がかかっていますが、直径1〜2mもある大ぶりの瘤を割った円形の板が、1900年代後半にテーブル材として流通していました。これほど大きな瘤材は非常にレアですが、それよりも比較的入手がしやすい、一回り、二回り小振りな瘤は、器や皿などの食器類、万年筆やペンなどの小物製作の材料として珍重されています。模様が緻密な為、小さくなっても美しい印象を損わず、色々な造形に馴染みます。
さいごに
見た目に特徴のある瘤材ですが、大きさの割に重量があり、加工材としての強度に優れているものが多いです。瘤材は樹木の傷跡の修復が結果的に瘤になるという特殊な生成プロセスですが、その異様さはしっかりと木目にもあらわれています。木製品の味が、必ずしも模様にあるわけではありませんが、直に目に入れば、目がいってしまう強さ、優美さ、繊細さがあります。いつ頃から評価された材種なのかは資料や文献に記載がなく不明ですが、明治期には貴重材の一種とされていたようです。
楠材の瘤(こぶ) |